スリッカーブラシにおける針布の機能と品質

繊維産業の精密技術

スリッカーブラシのヘッド(ブラシ部分)には、綿布にゴムを貼りつけた“基布”に金属ワイヤーを植え込んだ“針布”というものが使用されています。

“針布”を製造する装置を「植針機」と呼びます。“針布”は元来、繊維産業の紡毛(カーディング)と呼ばれる作業工程と起毛と呼ばれる作業工程で使用されるものです。

紡毛とは、毛玉状の絡みあった繊維を櫛とき、不純物や短繊維を除去し繊維の方向性を揃える工程です。起毛とは、ベルベット、フリース、毛布などの高級織物を毛羽立出せ、ふわっとやわらかい風合に仕上げる工程です。そしてこれらの作業に使用される針布を、それぞれ紡毛針布、起毛針布といいます。針布は、高い加工精度と耐久性を要求される繊維産業の重要な生産材なのです。

良質の針布を製造するには繊細かつ高度な技術が必要とされます。紡毛針布と起毛針布、双方の機能をあわせ持ち、しかもペットに過度な刺激を与えないように工夫されたものがスリッカーブラシの針布です。まさに精密加工の集約といえるでしょう。

スリッカーブラシとは、他のブラシでは真似のできない美しくやさしい風合に仕上げることを目的とするものです。弊社では、繊維産業で使用されている「植針機」をスリッカーブラシ用に改造した装置を使用し、繊維業界の技術を正しく伝承しています。ものまねで作った針布とは本質的に違います。

続きまして、針布の機能上や重要なポイントを記述いたします。

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スリッカーブラシはブラシ型の櫛

毛玉や絡んだ毛に曲がったピンの先端が入り込んで櫛とき、捌きます。まさに梳る(くしけずる)のです。

ピンの腰折れ(曲がり)が45°以上ないとピンの先端が縺れ毛に入り込みません。ピンの横腹で引掛けて引っ張ることになります。これではスリッカーブラシの機能を果たさないばかりか、いたずらにペットに刺激を与えるだけです。

実際、繊維業界の紡毛針布や起毛針布では45°~60°腰折れしています。この腰折れの角度がなめらかな櫛通りと完璧な仕上がりを約束します。

スリッカーブラシは櫛の機能を合わせ持っていなければならないのです。また、なめらかな櫛通りは使用者の指から腕への負担をも和らげます。

スリッカーブラシにおける針布の機能と品質
スリッカーブラシにおける針布の機能と品質

腰折れのシャープさは粘り腰と耐久力

腰折れがシャープに折れ曲がった針布のピンは、絡んだ毛に粘り強くくいさがります。そうでないピンは僅かな力で伸びようとし、絡んだ毛から逃げてしまいます。

これではスリッカーブラシとして機能しないばかりか、間違えばペットの皮膚を引っかいてしまいかねません。また、腰折れのシャープなピンは耐久性にも優れ、過酷な使用にも長期間変形することがありません。

スリッカーブラシにおける針布の機能と品質

針布の美しさは品質の証し

針布のピンの植込み位置が整然としていること。植込みの角度は均一であること。

スリッカーブラシの正面や斜め方向から眺め、ブラシの角度を少しずつずらしていくと、良質のスリッカーブラシでは、ピンが美しい幾何学模様に見えます。このようなスリッカーブラシは、力を均等に分散し、むらのないブラッシングを可能にします。

過度な力を逃がすため、植込み角は5°~10°程度がいいとされています。

針布のピン先が平らな平面を形成せず凸凹があると、凸のピンがいたずらにペットの皮膚を引っ掻きます。

ペットがブラッシングを嫌がるようになったり、ひどい場合には皮膚を傷つける結果になりかねません。完全なブラッシングができないことは言うまでもありません。

スリッカーブラシにおける針布の機能と品質
スリッカーブラシにおける針布の機能と品質

針布は繊細な注意力と習熟技術の集約

針布の製造機は自動機械であるとはいうものの、部品同士、あるいは原材料との摩擦に常にさらされています。また短期間で部品が摩耗していきますので、絶えず調整、修理、交換を繰り返さねばなりません。

以上から、毎日同じ品質の針布が出来上がってくるとは限らないのです。ピンに上質のワイヤーを使用すれば尚のことです。

高品質の針布を安定して造りつづけることは、製造機の性能、技術者の集中力と習熟技術の賜物なのです。同じブランドの同じ製品でも、品質が同じとは限らないのです。

スリッカーブラシにおける針布の機能と品質

張力、弾性、粘性、反発力、そのバランス

スリッカーブラシは、ピンの張力、基布の表面のゴムの弾性、基布の裏地の綿布の腰の強さ、そして内蔵されたスポンジの反発力、これらのバランスで使用感が変わります。

しっかりとした(ハードな)使用感のものはスリッカーブラシとして十分機能しますが、ペットに負荷を与えないためにブラッシングの技術を必要とします。やわらかい(ソフトな)使用感のブラシでは、ペットに与える負荷は少なくて済みますが、無駄毛の除去が完全にはできませんし、スリッカーブラシの機能が充分に引き出せません。

そのため、スリッカーブラシは、十分なしなやかさと適度な反発力を必要とします。原材料の品質が安定していることが重要になります。

弊社では天然ゴムと綿布を張り合わせた基布、ピンの材料となるステンレス(SUS304)ワイヤー、クッションのウレタン、すべて信頼のおける国内メーカーのものを使用しています。

スリッカーブラシにおける針布の機能と品質